小松亮太(Ryota Komatsu)

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4.オルケスタ・ティピカ[文:高場将美]
「最終回」
タンゴに興味をもって、いろいろなCDなどを聴くようになると、出てくるのが「オルケスタ・ティピカ」ということばです。これは昔から、スペイン諸国で、その土地独自の音楽を演奏する特有の楽器編成の楽団のことです。直訳すれば典型的(英語のティピカル)オーケストラですね。

タンゴでオルケスタ・ティピカと名乗る楽団の出現は1910年代はじめです。
フルートやギターも活躍していたので、いまの耳には「ティピカルな」タンゴ・サウンドには聞こえません。1920年代から、複数のバンドネオンとヴァイオリン、それにピアノとコントラバスという編成が一般化し、これが広く認められるオルケスタ・ティピカの形になりました。その後、弦セクションの拡張や、臨時にほかの楽器を加えることはあっても、1960年代まで、タンゴの音楽はオルケスタ・ティピカによって表現されました。

商業的にタンゴ絶頂期の1940年代には、ブエノスアイレスという都会と、その首都圏(日本の6大都市の下のほうくらいの規模かな)に、200ぐらいオルケスタ・ティピカがあって(ぜんぶ別メンバーですよ)、ほとんど毎日(ヘタな楽団でも毎週末)、働いていました。信じられない!

ブエノスアイレスで聞こえる音楽がタンゴ一辺倒でなくなり、若者の興味は多様化し、新しいダンスが流行し、ザ・ビートルズが世界を席巻し……10人以上の編成のオルケスタ・ティピカは経営ができなくなりました。消費者が減り、しかも経済的に苦しいから、大勢のメンバーを養うギャラは払えない。タンゴは小編成グループで生きることになります。アストル・ピアソラは5重奏にしましたね。彼の場合は、オルケスタ・ティピカという古い形では、表現の手段にならなかったのですが、現実的な経済効率の問題が、5人編成を選んだ最大の理由です。

近年は、若いミュージシャンが、ピアソラを生んだ母体である伝統タンゴの根を追求する一環として、機会を見つけてはオルケスタ・ティピカを組んでいます。

ほとんど50年間にわたって、タンゴ音楽の99%はオルケスタ・ティピカの形で演奏され、表現が発展・円熟・完成してきたのです。タンゴの魅力のすべては、リズム・メロディ・ハーモニーの面で、オルケスタ・ティピカから育ってきました。

オルケスタ・ティピカこそ「タンゴの基本」
――古い録音がたくさんCDになっていますから、ぜひどれか聴いてみてください。

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