世界で、タンゴと形式名のつく音楽は、大きく言って3種類あります。
まず第1に、スペイン南端の港町カディスで、19世紀初めに生まれた、歌入りダンス音楽が「タンゴ」と呼ばれました。リズムは2拍子――このタンゴは、今日もフラメンコの重要な曲種です。歌とギター、手拍子、そして踊りが入って、活気にあふれています。
このタンゴのリズムが、スペインの植民地だったラテンアメリカにわたり、ロマンティックな色などがついて、スペインに逆輸入されました。現在はこのスタイルでは作曲されませんが(ほかの名前になったりした)、クラシックのピアノ曲「アルベニスのタンゴ」など、曲はわずかながら生き残って、愛されています。
以上の2種に、さまざまな音楽感覚が加わって、19世紀後半に、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで誕生したのが、わたしたちのいう「タンゴ」です。世界じゅうでダンスや歌謡曲に入っているタンゴのリズムは、すべてこのアルゼンチン・タンゴが原形です。
このタンゴをつくったのは誰?
こんな大問題に、答えられる人はいません。ただひとつ、たしかなのは、タンゴのリズムは、踊り手の足から生まれたということです。プロのダンサーではなく、踊り自慢の男が自分で遊ぶダンスから、タンゴが形をとってきました。最初にタンゴのリズムで伴奏した楽器は、ギターだったようです。リズムは、現在のタンゴよりずっと単純明快で、軽いです。いま《ミロンガ》と呼んでいるリズムが、タンゴの原形にいちばん近いです。ただし、もっとノンビリした感じでした。
タンゴの生まれたころのブエノスアイレスは、首都で国際港だといっても「大草原の大きな村」にすぎませんでした。2階建ての家は200軒、3階建ては30軒――その場末の空き地が、たぶん最初にタンゴ(の原形)が踊られた場所です。
そこで新しいステップを発明した男は、相手を求めて、女性のいる酒場へ出かけました。男女が抱き合って踊る、世界一(当時のことですよ)アヤシいダンス《タンゴ》の誕生です。ある有名な学者は、タンゴの発明は世界舞踊史上の革命だったと言っています。
このダンスがどのように大発展していくのか、それは次回のお話としましょう。
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